旧優生保護法下の強制不妊手術 国家賠償請求の動き


 旧優生保護法(1948~96年)の下で強制的な不妊手術を受けさせられたとして、2018年1月30日、宮城県内の60代女性が初めて国家賠償請求訴訟を起こしました。4月には東京都に住む70代の男性が訴えを起こす見通しです。障がいや遺伝性の疾患を理由に手術などを受けさせられた人たちは、記録に残るだけで約2万5000件とされています。【→詳細は本文】


 

旧優生保護法(昭和23年〜平成8年) 手術対象は7割が女性

 1948年(昭和23年)に制定され、1996年(平成8年)に母体保護法に改定されるまで続いた「旧優生保護法」。日弁連によると、障がいや遺伝性の疾患を理由に不妊手術などを受けさせられた人たちは記録に残るだけで約2万5000件、中絶は約6万件行われた、とされています。手術の対象は7割が女性だったとされています。このうち、ハンセン病患者には国が謝罪・補償をしていますが、他の人たちは取り残されたままになっています。
 毎日新聞によると、前身の「国民優生法」(1940年制定)は、多くの精神障がい者らが殺されたナチス・ドイツの「断種法」をモデルとしていて、ドイツは戦後、被害者に補償金と年金を支給。スウェーデンも90年代に実態調査し、補償を始めています。

一連の動きの発端は日弁連の意見書 2017年2月

 今回の一連の動きの発端は、日本弁護士連合会が2017年2月22日に、国に対し被害者への謝罪、補償と被害の実態調査を求める意見書を発表したことでした。
 この意見書では、「被害者が高齢であることに配慮し、速やかに被害を回復すべきだ」としていました。
 これより前、2015年6月に、10代で何も知らされず不妊手術を強要されたとして、宮城県の70代女性が日弁連に人権救済を申し立てていて、国連女性差別撤廃委員会が2016年3月、日本政府に被害の実態調査と補償を勧告していました(2017年2月23日付 毎日新聞など)。

個人名記された資料 19道県に約2700人分 共同通信

 2018年1月25日、知的障がいなどを理由に不妊手術を施されたとみられる個人名が記された資料が、19道県に約2700人分現存していることが共同通信の調査で確認された、と報じられました。

86歳医師の告白「審査過程はずさん」 毎日新聞

 2018年1月28日には、東京都立病院が、精神疾患と診断された20代女性について結婚を理由に優生手術が必要と都に申請していたことが、同病院の元勤務医が保有していた資料で明らかになった、と毎日新聞が報じました。この精神科医(86)は、自らも優生手術に関わったことを認めた上で「審査過程はずさんなケースも少なくなかったと考えられる」と振り返った、と同紙は伝えています。

宮城県内の60代女性 初めて国家賠償請求訴訟<2018年1月30日>

 2018年1月30日、宮城県内の60代女性が初めて国家賠償請求訴訟を起こしました。「重大な人権侵害なのに、立法による救済措置を怠った。旧法は憲法違反だ」として、国に1100万円の損害賠償を求める訴訟を、仙台地裁に起こしました。原告の女性は知的障がいがあり、15歳だった1972年に不妊手術を強制された、としています。

記録が残っていない人にも「認定」の動き 宮城

手術を強制されながら、都道府県が記録を破棄していたため裁判を起こせていない人もいる、とメディアは報じています。
こうしたなか、2018年3月2日、国に提訴する意向を固めている70代の女性について、宮城県は、手術を受けた記録が残っていないものの、▽手術の痕があることや▽関連する文書が残っていることなどから、女性が手術を受けたと認定する方針を示し、今後の判断基準の一つにしていくことにしている、とNHKニュースが報じました
全国で2番目に多い1406人が優生保護法のもとで手術を受けたという記録がある宮城県では、不妊手術を受けた記録をまとめた「優生手術台帳」には859人分の記録しか残っていないということです。

相談窓口設置の動き 北海道

2018年3月12日、全国で最も多い2500人余りが手術を受けたとされる北海道庁で、本人や家族などからの相談に対応する専門の窓口が設置されて、対応が始まりました。

国会でも議員立法で救済の動き

2018年3月6日、救済のために超党派の国会議員による議員連盟が発足。具体策を盛り込んだ法案を議員立法の形で国会に提出することを目指す方針を決めました。
また、3月13日には、自民・公明両党が作業チームを設けて、具体的な立法措置の検討を始めることを決めた、と報道されました。


新しい資料発見も

 2018年3月19日には、北海道議会でこれまで確認されている6000ページ余りに加え、道内の保健所などから、新たに4000ページ余りの資料が見つかったと報告がありました。
 愛知県は3月22日、県精神医療センター(旧県立城山病院、名古屋市千種区)で女性患者に不妊手術をしたとの記載のあるカルテが見つかったことを公表したと、毎日新聞が伝えました。県内での発見は初めて。
 群馬県は3月22日、旧優生保護法に基づいて実施された手術に関し、県内の保健福祉事務所を緊急調査した結果、新たに19人分の資料が見つかったと発表した、と毎日新聞が報じています。

男性からの提訴の動きも

 2018年3月22日には、東京都に住む70代の男性が国に損害賠償を求めて、4月にも訴えを起こす方針を固めた、とNHKなどが報じました。昭和32年ごろ、10代の時に障がいがないにも関わらず、当時住んでいた宮城県内で、説明のないまま不妊手術を受けさせられたとしています。各メディアは、男性の提訴は初めてと報じています。